言葉や行動による嫌がらせ行為を意味する「ハラスメント」。被害者のメンタルヘルスや職場環境の悪化につながる社会問題として、誰しも注意を払うべきものとなりました。
医療現場では、患者さんの命を守るという責任感の強さから、つい指導がエスカレートしてしまい、いつの間にかハラスメントの加害者になってしまうケースも考えられます。
そこで今回は、ハラスメントの定義や事例、ハラスメントの加害者にならないための対策を紹介します。
後輩や部下を指導する立場の看護師さんは、ぜひ参考にしてみてください。
職場におけるハラスメント
まずは職場におけるハラスメントの種類や、ハラスメントが起きやすい職場の雰囲気について紹介します。
誰にでも起こり得る身近な問題として、理解を深めておきましょう。
知っておきたい6つのハラスメント
看護師さんが働く職場で起こり得るハラスメントの種類としては、以下の6つが挙げられます。
1.身体的攻撃:殴る蹴るなどの暴力行為
2.精神的攻撃:人格否定、侮辱、執拗に責める行為
3.個の侵害:個人のプライベートへの過度な詮索
4.人間関係の切り離し:無視や仕事を教えないなどの行為を通して人間関係から孤立させること
5.過度の要求:能力を大きく超えた業務の押し付け
6.過少の要求:本人の能力に対して簡単な仕事を任せること
身体的な暴力や暴言だけではなく、「人間関係の切り離し」「過大・過少な要求」「個の侵害」などの行為もハラスメントに該当します。
また、相手を傷つける意図がない場合でも、相手が不快な思いをすればハラスメントとなってしまう点には注意が必要です。
このことから、ハラスメントは誰もが無視できない問題であるといえます。
働く看護師さんの半数以上がハラスメントを経験
2017年に実施された日本看護師協会の調査結果によると、1年間にハラスメントを経験した看護師さんの割合は約53%。半数以上の看護師さんが勤務中に何らかのハラスメントを受けた経験があることになります。
また、ハラスメントが起こりやすい職場には、「残業が多い、休みが取りにくい」「上司、部下間のコミュニケーションが少ない」「失敗が許されない雰囲気がある」といった特徴があることもわかっています。
ハラスメントを未然に防ぐためには、個人だけではなく職場全体での取り組みが必要です。
看護師さんが受けるハラスメント事例
無意識のうちにハラスメントの加害者になってしまわないためには、ハラスメントにあたる指導やコミュニケーションの内容をしっかりと理解しておくことが大切です。
例えば、以下のような事例はハラスメントに該当します。
・特定の人に負担の大きい仕事ばかりを押し付ける
・周囲に人が大勢いる前で叱責する
・本人や家族などのプライベートについて詮索する
・飲み会や食事会に誘わない
・業務を多く振り分け残業をさせる
・ミスを執拗に責める
他にも、妊娠している同僚や後輩に対して「自分が妊娠しているときの働き方は〜だった」といった、価値観を押し付けるような言葉をかけることもハラスメントとして受け取られる場合があります。
普段の何気ない会話の中でも、性別や身体的特徴、妊娠などのセンシティブな話題には十分に注意が必要です。
良かれと思ってした行動や発言も、相手が不快だと感じた場合にはハラスメントになってしまうことを頭に入れておきましょう。
ハラスメントの加害者にならないために
最後に、職場でのハラスメントや、あまり知られていない「セカンドハラスメント」の防止策を紹介します。
相手を傷つけないために意識したい点をチェックしておきましょう。
自身の言動を時々立ち止まって振り返る
指導とハラスメントの線引きはなかなか難しいもの。
中には、つい厳しい口調で部下や後輩を叱責してしまった経験のある方もいらっしゃるでしょう。
指導のエスカレートを防ぐために大事なのは、指導の目的が「相手の成長」であることを忘れないようにすることです。
否定的、攻撃的な言動は避け、常に見守る姿勢を心がけましょう。
つい感情的になってしまいそうな時は、一度立ち止まって、自身の振る舞いやコミュニケーションの取り方を客観的に見直してみることも大切です。
セカンドハラスメントに気をつけよう
セカンドハラスメントは、ハラスメントの被害者が周囲に相談をした際に、被害者が悪いと責められたり、バッシングや嫌がらせを受けたりしてしまう二次被害を指します。
「相手はあなたのことを思ってやったことだと思う」「そのようなことを気にしていたら仕事にならない」のような発言により加害者側を擁護したり、相談者を責めたりする言動はセカンドハラスメントに該当します。
勇気を出して被害を打ち明けた相手を余計に傷つけてしまうことになりかねないため、ハラスメントに関する相談を受けた場合は無責任な言動は避け、慎重に対応するようにしましょう。