タスク・シフト/シェアとは?働き方改革で変わる、看護師の役割や特定行為研修とは?

医療従事者たち

医療業界のタスク・シフト/シェアとは、医師にしか行えなかった業務の一部を看護師や薬剤師など他の業種に任せる、または複数業種で分担して行う仕組みのことです。

「タスク・シフト/シェアで看護師さんの働き方はどう変わるの?」「医師の業務を行う上で必要な資格はある?」などの疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では、タスク・シフト/シェアの概要や看護師さんの業務内容の変化について解説していきます。

タスク・シフト/シェアで変わる看護師さんの働き方

医師と相談する看護師

医療業界では、タスク・シフト/シェアの取り組みが進んでいます。
ここでは、タスク・シフト/シェア導入の背景や、看護師さんの働き方の変化に大きく関わる「特定行為」について見ていきましょう。

タスク・シフト/シェア導入の背景

タスク・シフト/シェアの導入は、医師の働き方改革の一環です。
人材不足の解消や医療の質の向上にも期待できると、注目を集めています。

2018年に法律で一般労働者の残業時間に上限が設けられ、さまざまな業界で働き方改革が行われることとなりました。
労働環境の改善が難しいとされている医療業界では、2024年からの適用を目指し、タスク・シフト/シェアをはじめとした働き方改革が進められています

特定行為|タスク・シフト/シェアを理解するためのキーワード

医療業界の人材不足が懸念される中、看護師さんには、役割の拡大が求められています
難易度の高い診療の補助業務は、医師があらかじめ作成する「手順書」に従い、医師の指示がなくとも実施できるレベルの高いスキルを持った看護師さんの活躍が期待されているのが現状です。
そうした行為を「特定行為」として位置付け、特定行為を行える看護師さんを「特定看護師」と呼びます。

「特定行為」の分類には、以下の表の通り、21区分とそれぞれの区分に紐づく38行為があります。

【特定行為の区分一覧】

・呼吸器(気道確保に係るもの)関連
・呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連
・呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連
・循環器関連
・心嚢ドレーン管理関連
・胸腔ドレーン管理関連
・腹腔ドレーン管理関連
・ろう孔管理関連
・栄養に係るカテーテル管理(中心静脈カテーテル管理)関連
・栄養に係るカテーテル管理(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理)関連
・創傷管理関連
・創部ドレーン管理関連
・動脈血液ガス分析関連
・透析管理関連
・栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連
・感染に係る薬剤投与関連
・血糖コントロールに係る薬剤投与関連
・術後仏痛管理関連
・循環動態に係る薬剤投与関連
・精神及び神経症状に係る薬剤投与関連
・皮膚損傷に係る薬剤投与関連

※詳細な38行為については、『看護の専門性の発揮に資するタスク・シフト/シェアに関するガイドライン及び活用ガイド』P20でご確認ください。
https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/shift_n_share/guideline/tns_guideline.pdf

特定行為を行うには研修が必要

特定行為を実施する「特定看護師」になるためには、指定機関で高度な知識と技術についての研修を受ける必要があります
ここでは、研修の内容や期間、費用などの概要を確認しましょう。

受講資格

求められる受講資格は、指定研修機関により異なりますが、「看護師としての実務経験が3〜5年以上」としているケースがほとんどです
指定研修機関の一覧は、以下のサイトから確認できます。

厚生労働省:【特定行為に係る看護師の研修制度】指定研修機関について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000087753.html

研修の内容

研修で学習する内容は、「共通科目」と「特定科目」に分かれています。
「共通項目」は、全ての特定行為区分に共通して必要となる知識やスキルを身につける項目で全7項目、250時間あります。

【共通科目】

・臨床病態生理学
・臨床推論
・フィジカルアセスメント
・臨床薬理学
・疾病・臨床病態概論
・医療安全学
・特定行為実践

一方、「特定科目」は、特定行為の一覧で示した、21区分ごとに必要となる知識やスキルをそれぞれ学びます。区分ごとに研修時間は異なりますが、5〜34時間です。

参考:厚生労働省『これからの医療を支える看護師の特定行為研修制度ご案内』
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000780300.pdf

研修に必要な期間

研修に必要な期間は、指定研修機関や受講する科目によって異なりますが、おおよそ5ヶ月〜2年間ほどとされています。

研修に必要な費用

研修費用は、およそ30万円〜250万円ほどと幅があります。
条件を満たしていれば、教育訓練給付や人材開発支援助成金などの支援制度の利用可能です。

参考:厚生労働省これからの医療を支える「看護師の特定研修制度」
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000780295.pdf

特定行為研修後の業務内容の変化

特定行為研修を受けた看護師さんは、特定の医療行為について、医師の判断を待つことなく、手順書に従って個人の判断で医療行為ができます

脱水症状の患者さんの診察を例にとって、具体的なケアの流れの違いを確認しましょう。

【従来のケアの流れ】

・医師:患者さんを診察し、脱水症状があれば報告を指示
・看護師:脱水症状を疑いがある旨を医師に報告
・医師:点滴の実施を指示
・看護師:点滴を実施し、医師に結果報告

【特定看護師研修後のケアの流れ】

・医師:患者さんを診察し、脱水症状があれば報告を指示
・看護師:脱水症状の疑いが見られたら、手順書を確認し、点滴を実施。実施後に医師に報告

従来と比べて、医療行為をする上で医師の指示を確認する時間が省け、タイムリーな看護ケアができるようになります。

タスク・シフト/シェアの導入は、看護師さんの働き方の変化に大きく関わってくる問題ですが、現状は医療機関によって方針に差があるようです。
働きやすさを重視する看護師さんは、ぜひ専門のコンサルタントに相談してみてはいかがでしょうか。

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