コミュニケーションは、お互いの知覚や感情、思考をメッセージとして送り受けとり合うことです。普段私たちが当たり前のように行っていることですが、人とのコミュニケーションに苦手意識をもっている方もいます。
特に看護師さんの場合、患者さんや同僚、先輩などとのコミュニケーションに悩むこともあるでしょう。
そこで今回は、すぐに実践できるコミュニケーション術「きく力」について解説します。コミュニケーションの2つの大きな要素は、「きく」ことと「話す」こと。
コミュニケーションが苦手と感じている看護師さんは、まずは今回紹介する“話をきく力”を身に付けてみてはいかがでしょうか。
3つのきく「聞く・聴く・訊く」の違いは?
「きく」には、3つの意味、漢字があるのをご存知でしょうか?
まずは、この3つの「きく」の違いについて理解を深め、看護師さんにとって必要な「きく」について考えてみましょう。
1.聞く
「聞く」は、意識せずに耳に入ってきた音や言葉を認識すること。無意識にもかかわらず、何らしかの情報が耳から入るときに使います。例えば、お店で流れているBGMを音として認識することがこれに該当します。
2.聴く
「聴く」は、意識して対象の音や言葉を感じ取ろうとすること。文字の通り“耳に加えて目と心でも聴く”という意味があります。何となく認識する「聞く」と違い、相手の伝えたいことを理解しようと、注意深く耳を傾けることです。
3.訊く
「訊く」は、自分の知りたいことを明確にするために尋ねること。「聞く」や「聴く」が、相手側からのアクションで始まるのに対し、「訊く」は自分からアクションを起こすのが特徴で、自分が知りたいことを質問するときに使います。
「聴く」の基本
3つの「きく」の違いについて解説しましたが、中でも看護師さんにとって重要なのは相手の話を “聴く“ことです。
患者さんの伝えたいことを理解しようと注意深く話を聴くことにより、信頼関係を築くことができます。
コミュニケーションといえば、話すことや伝えることにフォーカスしてしまいがちですが、聴くことこそコミュニケーションの基本と言えます。
聴く時に大切にしたい“非言語的コミュニケーション”
「聴く」ときに併せて意識したいのが、“非言語的コミュニケーション”。言葉以外で伝えるコミュニケーションのことです。
TPOに合わせた声のトーンや表情作り、身振り手振りなどのジェスチャーもこれにあたります。
他人から受け取る情報の6~9割が非言語的コミュニケーションとも言われており、相手の話を聴くときにも欠かせない要素です。それぞれのポイントを見てみましょう。
・相手と適切な距離を保つ
人にはそれぞれ他人に踏み込まれたくない”パーソナルスペース”があり、近づきすぎるとかえって不快感を与えてしまうことがあります。
一般的には、親しい同僚であれば0.5~1メートル、上司や初対面の人であれば1~3メートルほどが許容範囲。
まずは相手との適正な距離を把握し、話し手の表情や態度によってその距離を変えてみるのもいいでしょう。
・目線や表情を意識する
マスクをしていると顔が隠れてしまい、表情が相手に伝わりづらいことがあります。
そのため、看護師さんにとっては特に目元を意識した表情作りが大切です。
「目は口ほどに物を言う」ということわざを意識して、気持ちのこもった優しい目つきを心掛けましょう。
・適切な相槌を心掛ける
相槌は「あなたの話を聞いていますよ」というアピールです。相手の承認欲求を満たし、コミュニケーションをより円滑にしてくれます。話し手の言葉の速さや強さに呼吸を合わせ、相手の声色やトーンによって自分の相槌も同じように変化させることがポイントです。
患者さんや同僚と話す際は相槌をうちながら、話の内容を確かめるような質問をして、きちんと聴いていることもアピールしてみましょう。
今回は、コミュニケーションの中でも「聴くこと」に焦点を当てて解説しました。昔から「聞き上手は話し上手、質問上手は説明上手」といわれています。
コミュニケーションに苦手意識がある看護師さんは、今回紹介したポイントを意識しながら、まずは「聞き上手」を目指してみてください。