「伝えたはずなのに、なぜ理解してもらえていないのだろう」、そんな経験をしたことがある方も少なくないでしょう。
特に看護師さんは、短い時間で大切な情報を手際よく伝えなくてはいけないシチュエーションが多いため、焦りや緊張により、上手に話せないこともあるはずです。
そこで今回は、コミュニケーション術「伝わる力」について解説します。今回紹介するポイントを意識して、理想的なコミュニケーションを目指してみましょう。
「伝える」と「伝わる」の違い
たった1文字の違いですが、その意味は大きく異なります。発信者側になった時に大切なのは「伝える」を超えて「伝わる」を目指すこと。
多くの人が「伝える」で止まってしまい、「伝わる」まで届いていない状況を把握できていません。まずはその意味の違いを理解しましょう。
1.伝える
「伝える」は、発信者の伝えたい内容を一方的に相手へ受け渡した状態のこと。
主語は“自分(例:私が伝える)“で、発信者側からの一方向のアクションです。相手の状況を無視して、自分目線で話すため、本当に伝えたいことが伝わっていないことがあります。「伝えたいことを話した」というだけでは、相手の心に届いているかどうかはわかりません。
2.伝わる
「伝わる」は、発信者が伝えたい内容がきちんと相手に理解を得られている状態のこと。
主語は“相手(例:患者さんに伝わる)”で、双方向のコミュニケーションです。
自分の投げかけから、相手の行動や理解、感情が喚起される行為で、伝えたいことが相手の心に届くことを目的としています。
相手の心に届いているかどうかを知るためには、相手の表情や声のトーン、雰囲気などを注意深く観察することが大切です。
「伝わる」コミュニケーションとは
以前、コミュニケーションが苦手な看護師さんが身につけておきたい「聴く力」という記事でもお伝えしましたが、コミュニケーションとは、知覚や感情、思考をメッセージとして送り受けとり合うことです。
つまりコミュニケーションは、受け手が理解できていない場合は成立していません。発信者が「何を伝えたか」ではなく、受け手に「どう伝わったか」が重要です。
相手に「伝わる」ためには
では、「伝わる」コミュニケーションのためには、どのようなことを意識すべきなのでしょうか。それぞれのポイントを見てみましょう。
・相手の立場に合わせる
看護師さんの場合、患者さんや同僚、医師など、それぞれの相手の理解度が異なるため、相手に応じて伝え方を変える必要があります。
患者さんに専門的な医療用語をたくさん使ってしまうと、戸惑わせてしまうこともあるはずです。
相手が安心して言葉を受け止められるように、相手の年齢、性別、医療に対する知識量などの情報をコミュニケーションに取り入れましょう。
・同じ“ものさし”を使う
お互いの解釈のズレを少なくするために「同じ基準の”ものさし”」を使って伝えましょう。“少なめ”や“とても”などの抽象的な表現ではなく、はっきり数値化し具体的に話すことで、認識の相違を防ぎます。
例えば、食事管理をしている患者さんの場合、「主食を何割、おかずを何割残しています」と伝えたり、痛みを訴えている患者さんの痛みのレベルをフェイススケールの数値で伝えたりすることを試してみましょう。
・相手が受け止められる情報量で伝える
聞き手の集中力は、70秒ほどと言われています。そのため、一度に長々と話すのではなく、一番伝えたいメッセージを中心に情報の選択をすることが必要です。
具体的には、余計な言葉を入れず、話す時間を1文15秒以内に収めること。これはテレビCMなどでも用いられている方法です。
メッセージを短く切ることで、相手はより話を理解しやすくなります。申し送りの際もこの方法を意識すると伝わる力がぐっと上がるはずです。
・「上手に話す」をゴールにしない
「流ちょうに話すこと」も時には必要かもしれませんが、看護師さんにとって大切なのは、それぞれの立場に合わせた伝え方です。
相手の気持ちに寄り添い、相手の欲しい情報が何かを考えることが、「伝わるコミュニケーションの」の第一歩。
一方的に伝えるのではなく、伝えたいことがきちんと相手に理解を得られるように、相手の心の状態を意識して伝えましょう。
そして、相手の反応をしっかり観察し、常に「どう伝わったか」を意識しましょう。
今回は、コミュニケーションの中でも「伝わること」に焦点を当てて解説しました。コミュニケーションとは「伝える」ではなく「伝わる」こと。
コミュニケーションが思い通りにいかないと感じている看護師さんは、日々の会話や行動が“伝える”だけになってしまっていないか、振り返ってみましょう。
そして相手の心に「伝わる」コミュニケーションを目指してみてください。